相続・遺言と農地法第3条許可



   
 

1.相続・遺言と農地法3条許可


1)農地の相続
 農地等について相続が発生した場合は、農地法3条の許可は不要である。
相続には、大きく分けて法定相続と遺言相続がある。


法定相続:遺言がない場合に、民法の規定に従って相続する(民899条、900条)
遺言相続:遺言がある場合に、遺言の内容に従って相続する(民902条)


2)遺言
 遺言で財産を移動する方法として、@遺贈、A相続分の指定、B遺産分割方法の指定がある。

  区  分 相 手 示す内容 3条許可
遺言 @遺贈 包括遺贈 相続人/それ以外 財産の取得割合 不要
特定遺贈 特定の財産
A相続分の指定 相続人 財産の取得割合 不要
B遺産分割方法の指定 特定の財産 不要

遺言相続は、A相続分の指定、B遺産分割方法の指定により行い、3条許可は不要である。


A相続分の指定:取得割合のみを示す(遺産共有状態を解消するには、家庭裁判所における遺産分割手続きを経る必要がある)


B遺産分割方法の指定:財産が特定される(相続開始と同時に当該遺産は相続人によって相続されるので、遺産分割手続きは不要)


また、遺贈には包括遺贈と特定遺贈がある。


3)農地の遺贈
 遺贈には、特定遺贈と包括遺贈があり、

 特定遺贈とは、遺言で自分の財産の一部を他人(相続人であってもなくてもよい)に与えることをいう(例えば、遺言者が、全4筆の土地のうち、「甲農地と乙農地だけを相続人Aに与える」旨の遺言をした場合)


 包括遺贈は、遺言者が、自分の財産の全部または一定の割合を与えることをいう(目的物を特定しない遺贈。例えば、「Aに遺産の全部を与える」、「Aにすべての遺産のうち、3分の1を与える」と記載した場合)


 相続人でない者が包括受遺者とされた場合、その者は、「相続人と同一の権利義務を有する」とされ(民990条)、本来の相続人ではないが、これに近い地位を持つことになる。


農地法3条許可については、
包括遺贈:法3条許可不要
特定遺贈:法3条許可必要
である。


4)相続させる遺言
 遺言で相続人に対し特定の財産を残すには、上記のとおり、遺贈よりも遺産分割方法の指定の方が都合がよい。
 よって、遺言に、「相続させる」と記載することにより、遺言の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか、または遺贈と解すべき特段の事情がない限り、当該遺言は遺産分割の方法を定めたものとされるので、遺言書によって、自分の農地を特定の相続人に承継させたい場合は、遺言書の中で、例えば、「○○市○○町○○番の畑(○○平方メートル)は、長男○○に相続させる」と書いておけばよい。


2.共有農地の分割と農地法3条許可


 例えば、ある一筆の農地について、A、B、Cの3人の所有者がいる場合、この農地はA、B、C3人の共有農地であり、各共有者はその農地について共有分を有している。この場合、各共有者は、いつでも共有関係を解消することができる(共有物の分割)。1筆の農地を3人の共有持分に従って3分割することもできるし(現物分割)、あるいは3人の内の例えばA1人が当該農地の全部を取得し、その代わり、Aから他の2人(B・C)に対し、共有持分の価格賠償(金銭支払)をすることも可能である(全面的価格賠償による分割)。
 以上のように、共有農地が分割されると、分割後の農地は、A・B・C各人の単独所有になる。この共有物分割の実体は、共有者相互の間における共有物の各部分についての持分の交換または売買と考えられる。従って、共有物分割には、農地法3条の許可が必要とされている。


 
 
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