■農地法第3条第1項
農地又は採草放牧地について所有権を移転し、
又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、
賃借権もしくはその他の使用及び収益を目的とする
権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で
定めるところにより、当事者が農業委費会(都道府県知事)
の許可を受けなければならない。
※「許可を受けないでした行為は、その効力を生じない」(農地法第3条第4項)ので、売買等による登記ができません。
■農地法第3条許可の不要な場合
(1)解釈・判例上許可不要とされるもの
・相続
・法人の合併
・契約の法定解除、無効及び取消
・遺留分の減殺
・共有持分の放棄
・時効取得
など
(2)法律上許可不要と定められているもの
・農地法5条の許可を得る場合
・国又は郡道府県による取得
・基盤強化法による利用権設定など
・農事調停による権利の設定・移転
・土地収用法による収用・使用
・遺産分割、財産分与に関する裁判・調停、相続財産分与に関する裁判
・農地保有合理化法人による取得
・包括遺贈
・電気事業者や認定電気通信事業者が電線等のために設定する区分地上権
など
(3)許可を要する例
・契約の約定解除、合意解除(⇔法定解除)
・共有物の分割、持分の譲渡
・譲渡担保、代物弁済
・特定遺贈(⇔包括遺贈)
・真正な登記名義の回復(第3者ヘの移転の場合)
など
■許可手続き
1)許可権者
権利 |
権利取得者 |
目的 |
市町村内の農地取得 |
市町村外の農地取得 |
区分地上権以外の権利 |
個人 |
|
市町村 |
県 |
法人 |
農業生産法人 |
|
市町村 |
県 |
特定法人 |
|
市町村 |
県 |
その他の法人 |
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県 |
県 |
農業共同組合 |
経営受託 |
市町村 |
市町村 |
その他 |
県 |
県 |
区分地上権等の取得 |
県 |
県 |
※農林振興センターで許可する案件
・住所地の市町村区域外の農地についての権利を取得する場合
(農協が農協法第10条2項の委託を受ける場合を除く)
・農業生産法人及び特定法人以外の法人が権利を取得する場合(同上)
・区分地上権等の設定
2)許可申講
@連名申請
※ 単独申請が可能な場合
・競公売によって取得する場合(買い受け人)
・遺贈その他の単独行為での取得、移転(行為者=相続人又は遣言執行者)
・確定判決、裁判上の和解もし<は請求の認諾、民事調停法による調停、家事審判法による審判の確定もし<は調停の成立がある場合(買い受け人)
A添付種類
・土地の登記簿謄本
・小作地を取得する場合には、
6か月以内に小作者が同意したことを証する書類
小作者の使用収益権が差押え等の後に設定されたことを証する書面
・法人が権利を取得する場合には定款又は寄付行為の写し
・法律上要件がある場合には、そのことを証する書面
・単独申請する場合には単独申請の要件を満たすことを証する書面
・その他参考となる書類
B提出先は県許可、農業委員会許可共に農地のある各市町村の農業委員会
■許可基準
以下のいずれかに該当する場合には許可されない。
(1)小作地につき小作者以外が取得する場合
一般に禁止されているが、以下の場合は可能
@許可申請6か月以内に小作農等が同意した書面がある場合
A競売等あるいは滞納処分に係る差押え又は仮差し押さえの後に小作権が設定された場合で、この差し押さえに基づく競公売により取得する場合
(2)農地取得後に取得者等(世帯員を含む)が耕作すベき全ての農地等を耕作するとは認められない場合(耕作放棄地、不耕作地、違反転用地などがある場合)
※世帯主義(農地法第2条第5項、第6項)
「耕作又は養畜の事業を行う者の世帯員が農地又は採草放牧地について有する所有権その他の権利は、その耕作又は養畜の事業を行う者が有するものとみなす」
[世帯員…住居及び生計を一にする親族]
(3)農業生産法人及び特定法人以外の法人の権利取得
法令に定める場合については許可される
・法人の主たる業務に欠かせない試験研究又は農事指導のための農地
・地方公共団体が公用又は公共用に供する場合
(4)農業生産法人による所有権、使用収益権以外の権利の取得
使用収益権=地上権、永小作権、使用貸借権、賃借権
(5)特定法人による使用貸借権、賃借権以外の権利の取得
(6)信託の引き受けによる権利取得
(例外:農協法又は基盤強化法の農地信託事業による信託の引き受け、終了)
(7)耕作等の事業の委託を受けることによる権利取得
(例外:農協法に基づく委託による農協の取得)
(8)権利取得者又はその世帯員が耕作に必要な作業に常時従事すると認められない場合
・取得者、世帯員が自ら農作業労働に従事すること
・常時従事
(9)権利取得者又は世帯員が取得後に耕作の事業に供すベき農地の面積が50a未満
取得後の経営面積が5Oa以上必要(但し別表の地域では3Oa以上)
例外:
・花卉栽培、清浄蔬菜栽培など経営が集約的に行われるものと認められるもの
・農業委員会の斡旋する交換により取得し、一方が下限面積を満たすもの
・耕作を行っている農地に隣接し一体利用しないと利用が困難であるもの
・法人による取得が認められる場合
<下限面積の緩和>:農地法施行規則第3条の4第2項
設定区域が以下の要件を満たす場合、知事が、1Oa以上で定める任意の面積を別段面積として公示することが可能。
@当該区域内に遊休農地が相当程度存在し、
A当該区域の位置及び規模からみて、50a未満の農地を耕作する者の増加により、区域内及び周辺の農地等の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれのない場合。
(10)農地法による売渡後1O年以内に地上権等を設定しようとする場合
(やむを得ない事情による一時貸し付けなどを除く)
(11)小作地で耕作等を行う者が、小作地を貸し付け、質入れしようとする場合
(やむを得ない事情による一時貸し付けなどを除く)
(12)権利取得者又は世帯員の農業経営状況、通作距離から見て効率的に耕作を行うと認められない場合
※判断基準
・取得者等の従来の農業経営の状況
・その地域の立地状況、道路整備の状況、作目、取得面積など